2010年04月14日

宇治茶の「辻利」あれこれ(後編)


中編では、各社のホームページの会社概要、沿革を調べ、3社の関係を見てみました。が、ホームページだけでは限界があり、詳しいことは、それぞれの会社に直接あたるほかないように思いました。そこで各社に問い合わせてみました。「祇園辻利」さん、「京都宇治 辻利」さんからは、当方の不躾な質問にもかかわらず、大変丁寧な御返事をいただきました。

「祇園辻利」さんによると、まず、兄である初代・利右衛門氏と、その弟である三好徳次郎氏が兄弟で茶業を興されたとのこと(詳しくはわかりませんでしたが、兄弟で苗字が違うのは、婿入りや養子縁組などでよくあることでしょう)。兄・利右衛門氏が茶葉の生産栽培育成と問屋業を営なまれ、弟の三好徳次郎氏は主に販売業に携われたということです。

そして、販売業を受け継いだ3代目・三好徳三郎氏が台湾に渡り、日本茶の振興を高めると共に、台湾国内の振興にも尽力された、とのこと。戦後は、4代目・三好正雄氏が帰国され、祇園の地に開店、その後、5代目・三好通弘現会長が現在の「祇園辻利」に復興されたそうです。したがって、現在はそれぞれ独立した法人ではあるが、創業者・辻利右衛門氏の直系である「京都宇治 辻利」と「祇園辻利」の両社は親戚筋にある、とのことです。

「京都宇治 辻利」(「株式会社 辻利一本店」)さんによると、「祇園辻利」さんとの関係は、中編で紹介した四つの分類形態からすると「暖簾分け」になる、とのことです。「祇園辻利」さんの説明にもあったように、現在はそれぞれ独立した法人です。また「京都・宇治 辻利兵衛本店」さんは、「京都宇治 辻利」さんの二代目・豊次郎氏の娘さんの家系であり分家にあたる、とのことです。これで「中編」で疑問として残った、「京都宇治 辻利」、「京都・宇治 辻利兵衛本店」両社が同じ「山利」の商標を使用している理由も分かりました。この両社も現在は独立した法人です。

また、中編で疑問だった、「京都宇治 辻利」のホームページの「歴史」にあった二代目・豊次郎氏と、「沿革」に「二代目・利兵衛継承」とあった辻利兵衛氏は別人とのこと。利兵衛氏とは、創業者が興した商店の事業を豊次郎氏が継ぐまでの間、一時引き継いでおられた人で、現在の「辻利兵衛本店」の先祖にあたるとのことでした。

「京都・宇治 辻利兵衛本店」さんからは御返事がなかったので、創業者と利兵衛氏との関係や、豊次郎氏の娘さん、利兵衛さんと次郎氏の娘さんとの関係について、これ以上の詳しいことはわかりませんでした。しかし、ともに会社名に「本店」を名乗り、また、創業者の興した商店の商標「山利」を使用していても、どうやら「辻利一本店」さんが創業者の直系にあたり、本家であるということのようです。

以上をまとめると、次の図のようになると思います(「京都・宇治 辻利兵衛本店」さんのお返事によっては変わる可能性があります)。

創業者・辻利右衛門氏→2代目・三好徳次郎氏(創業者の弟) ⇒祇園辻利
 ↓
(利兵衛氏)→ → → → 
 ↓              ↓
2代目・豊次郎氏 →豊次郎氏の娘さんの家系 ⇒京都・宇治 辻利兵衛本店
 ↓           (2代目以降未確認)
 ↓
3代目・辻利一氏 ⇒京都宇治 辻利(辻利一本店)
  

「京都宇治 辻利」ホームページの「歴史」に書かれていた、かつての支店、小売店のあった場所も調べてみました。そうすると、今はそれぞれ独立した法人のようですが、それらしきものが存在していました(実際どうなのかは直接確認はしていません)。

北九州市小倉には、会社名が「株式会社 つじり」でストア名が「創業萬延元年 辻利」という店がありました(追記:法人名を2014年4月「辻利茶舗」へ変更)。楽天市場に店を出しておられ、店舗運営責任者は「辻史郎」さんとなっていました。「つじり茶屋」という店も展開されているようです。(※下記追記1参照)。

同・門司には「辻利園」、広島には「辻利一茶舗」がありました。この2店はホームページが見つからず詳しいことはわかりませんでした。また、「京都宇治 辻利」の「歴史」の中には出てきませんでしたが、岡山にも「辻利園」がありました。こちらも代表者の苗字は「辻」となっていました。ここもまた、お茶、茶道具の販売のほかに、茶房を経営されているようです。「京都宇治 辻利」さんによると、小倉と岡山の店は、「京都宇治 辻利」とは親戚関係にあり、「祇園辻利」さんと同様、「暖簾分け」した大切なお得意様でもあるとのこと。「大切なお得意様」ということは、「京都宇治 辻利」(株式会社 辻利一本店)が精製した宇治茶をこれらの店に卸しているということになるのでしょうか。

「祇園辻利」、岡山「辻利園」ともに、暖簾に同じ花びら(お茶の花?)のマークがあります。「祇園辻利」さんによると、「祇園辻利」と、小倉の「つじり」、岡山の「辻利園」との間には、業務上の関係はない、とのことでしたが、ルーツは同じであることを物語っているのでしょうか。

京都にある「辻利」3社の関係がおぼろげながら見えてきたように思います。いくつか疑問点は残りますが、これ以上のことを立ち入って調べても意味のないことのような気がして、途中で調べるのを止めました。

3社とも、お茶やお茶の加工品の販売などを通して、宇治茶の復興に尽力された創業者・辻利右衛門氏の志をつぎ、日本の食文化としてのお茶、ひいてはお茶の心を私たちに届けるべく、日々精励されていらっしゃるようです。その結果、それぞれの会社のお茶やお菓子、アイスクリームなど、大変おいしくいただくことができます。当方の無粋な問い合わせに丁寧にお答えていただいた老舗の、その懐の深さに感じ入りました。

調べも一段落したところで、お茶でも楽しむことにします。そういえば、アメリカのオバマ大統領は来日時に、5歳のころ訪れた鎌倉で、抹茶アイスを食べたことを覚えていると語っていました。緑茶、お抹茶は日本が世界に誇れる食文化、食材だとあらためて思いました。

(完)

【追記1】
北九州市小倉の「株式会社 つじり」(追記:法人名を2014年4月「辻利茶舗」へ変更)さんのブログ「TSUJIRI BROG」の2010年10月19日付記事によると、10月7日にグランドオープンした「統一阪急百貨台北店」に、「TSUJIRI 辻利茶屋」を開店した、とありました。その後の様子についてもブログで詳しく紹介されています(2010年10月27日・記)。

【追記2】

最近、久しぶりにスーパーで市販されている「京都宇治 辻利 抹茶ミルク」を手にとり、箱の裏を見たところ、発売元として「株式会社 辻利」の名前を見つけました。記事本文で見た「株式会社 辻利一本店」「株式会社 辻利兵衛本店」「株式会社 祇園辻利」とはまた別の名前です。そこで、この商品の販売者である片岡物産鰍フお客様相談室に問い合わせてみました。担当者の方によると「株式会社 辻利」とは、「株式会社 辻利一本店」と片岡物産鰍ニが共同で出資して設立した会社で、「株式会社 辻利一本店」の茶葉を使用した片岡物産鰍フ企画商品を販売している、とのことでした(2012年5月14日・記)。

【追記3】

この記事を書いてからすでに5年以上の歳月が流れています。最新のものではないことをご了解のうえ、お読みください(2016年1月吉日)。





ラベル:京都
posted by bow at 19:00| 戯言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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